ヒップホップの文化は単なる音楽ジャンルを超え、特有のファッション、ライフスタイル、そして「言葉」を生み出してきました。
日本国内のラッパーたちも独自のスラングやフレーズを駆使してリリックを書いています。ここでは、日本のラップシーンでよく耳にする言葉をいくつか紹介し、その意味や使われ方を解説します。
ラッパーがよく使う言葉を
1. ライム (Rhyme)
ラップにおいて最も基本的な技法であり、文末や文中の単語を響き合わせることでリズムを生み出します。日本語の場合、五七五の俳句のリズムに似ており、多彩な韻を踏むことができるのが特徴です。
2. フロウ (Flow)
ラップのリズムやメロディ、言葉を乗せる流れのこと。フロウが良いラッパーは、リスナーにとって聴きやすく、曲のビートに乗ってスムーズに言葉を紡ぎ出します。
3. ビート (Beat)
ヒップホップ音楽の背骨とも言える打ち込みやドラムからなるリズムトラック。ビートに合わせてラップすることが基本です。
4. サイファー (Cypher)
ラッパーが輪になってフリースタイルでラップを行うセッションのこと。技術の見せ場でもあり、コミュニティの結束を強める文化的要素もあります。
5. フリースタイル (Freestyle)
即興でラップをすること。頭の中のアイディアをその場で言葉に変換し、リリックとして展開します。ラップバトルでよく用いられる技術です。
6. マイクリレー (Mic Relay)
複数のラッパーが1本のマイクを使って交代でラップをすること。協調性と瞬発力が求められます。
7. バース (Verse)
曲の中で、コーラスとは異なる部分を指す歌詞のセクション。一つのバースは通常、16小節で構成されるのがヒップホップにおける一般的な形式です。
8. フック (Hook)
曲の中でリスナーの耳に残る、繰り返される部分。メロディやフレーズが印象的なフックは、楽曲の人気を大きく左右します。
9. バトル (Battle)
ラッパー同士が技術やリリックで競い合うこと。ラップバトルは、フリースタイルのスキルが特に重要視されます。
10. クルー (Crew)
同じ志を持つラッパーやヒップホップアーティストの集団。互いに刺激を受けながら成長していくことができます。
11. ディスる (Diss)
他のラッパーや人物を批判するラップを指します。しばしばバトルの中で敵対する相手に向けられる言葉で、その技術とセンスが試される瞬間です。
12. マイクチェック (Mic Check)
パフォーマンス前にマイクの音量や音質を確認するための行為。ラッパーが「マイクチェック、ワンツー、ワンツー」と言いながらテストするのはおなじみの光景です。
13. リリック (Lyric)
曲の歌詞全般を指し、ラップにおいてはメッセージやストーリーを伝えるための重要な要素。リリックはラッパーの個性や思想を反映します。
14. ミックステープ (Mixtape)
公式のアルバムリリースとは異なり、しばしば非商業的な手段で配布される音楽集。ラッパーが新しいスタイルを試したり、ファンに向けて直接音楽を届ける際に用いられます。
15. ビーフ (Beef)
ラッパー同士の個人的ないさかいや対立を意味するスラング。これがエスカレートするとディス曲に発展することもあります。
16. ブレイクビーツ (Break Beats)
ドラムのソロパート、特にビートが際立つ部分のこと。ヒップホップのトラック作成では、これらをループさせてリズムトラックの基盤とします。
17. ファンキー (Funky)
本来はファンク音楽を指す言葉ですが、ラップやヒップホップにおいては、「かっこいい」や「グルーヴがある」といった意味で使われます。
18. オールドスクール (Old School)
ヒップホップ黎明期のスタイルや文化を指す言葉。シンプルなビートや古典的なフロウが特徴です。
19. ニュースクール (New School)
1980年代中期以降のヒップホップを指し、オールドスクールと対比されることが多い。より複雑で高度なリリックやビートが特徴です。
20. ハスる (Hustle)
努力する、がんばるという意味で使われることが多く、ラッパーが自分のキャリアを築くための苦労や取り組みを表現する際に用いられます。
このように、ヒップホップやラップには独特の用語が存在し、それらは音楽をより深く理解するための鍵となります。これらの言葉を知ることで、ラップの世界がより豊かなものに感じられるでしょう。
21. バイブス (Vibes)
曲やライブ、あるいは特定のラッパーから感じられる特有の雰囲気や感情を指します。「良いバイブス」は心地よい感覚やポジティブなエネルギーを意味することが多いです。
22. シャウトアウト (Shout Out)
他の人物やグループへの感謝や尊敬を表現するために曲中で名前を呼び出すこと。コミュニティへの敬意を表す行為として頻繁に行われます。
23. インディーズ (Indies)
大手レコード会社に所属していない独立したアーティストやレーベルを指します。制作の自由度が高い反面、プロモーションや流通には限界があります。
24. トラック (Track)
一つの楽曲、あるいはビートのことを指します。ラッパーは「トラックに乗る」と言って、ビートに合わせてラップをすることを表現します。
25. グラインド (Grind)
常に作業を続ける、努力を怠らないという意味で使われます。音楽制作に限らず、ビジネスや日々の努力を指す場合もあります。
26. プロデューサー (Producer)
ビート作りや楽曲のアレンジ、レコーディング全般を指揮する役割を担います。日本のラップシーンではDJやビートメイカーもプロデューサーの役割を果たすことがあります。
27. サンプリング (Sampling)
既存の音楽や音声から一部を切り取り、新しい楽曲に組み込む手法。ヒップホップ音楽では重要な創作手法の一つです。
28. アディリブ (Ad-lib)
即興で加えられる歌声や言葉のことで、楽曲に深みや変化を与える効果があります。特にラップでは、独特の味わいを出すために使用されます。
29. バンガー (Banger)
非常に勢いがあり、クラブなどで盛り上がること間違いなしの楽曲を指します。ドライビングビートとキャッチーなフックが特徴です。
30. フード (Hood)
「ネイバーフッド(Neighborhood)」の略で、出身地域や育った街を意味するスラングです。多くのラッパーは自分のフードに誇りを持ち、リリックで表現します。
31. ゴーストライター (Ghostwriter)
他人のために歌詞を書くが、公にはそのクレジットが表されないライターのこと。一部のラッパーはゴーストライターを雇うことがあります。